隣の席の姫野くん。






「このみちゃん…あなたには昂よりもっとふさわしい人がいるわ」



「な、なに言ってんだよ!」




柔らかい手つきでこのみの首に触れる母さん。




このみはくすぐったそうに目を細めている。





「だって、ねえ…?」



にやりと笑った母さんを見て、身震いした




「こんなとこに自分のだって印つける独占力の強い男なんて、やめといた方がいいに決まってるじゃない?」




「…げっ!」




このみは自分の首に何があるのか気付いていないらしく、きょとんとしている。




でも、俺はさっき自分が満足した印を母さんに触れられて顔が青ざめていくのが分かった。



…なんだろう、この感じ。




すごく悪いことをしたわけでもないのに、なんでか後ろめたく、見つかったことが恥ずかしい。






「ねえ?このみちゃん。昂じゃなくて奏にしなさいよ」




母さんはにやにやしながら俺を見てる。





「おりぇ!このみと!結婚しゅる!」





奏は楽しそうに笑いながら細くて白いこのみの脚にしがみついた。





父さんは母さんの機嫌がいいうちにと、そっと部屋を出ていく。






…俺の、なのに。




俺のって印もついてるのに。



なんでみんなでこのみをとっていくんだ。



































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