隣の席の姫野くん。
俺は静かに手の力を抜いて、川瀬の腕を離した。
「姫野?」
心配そうに俺に寄って、上目遣いで見てきた川瀬。
その顔を見る余裕は俺にはなくて、俺を対象外と見なす川瀬に見られたくなくて
一歩、川瀬と距離をおいた。
「ひ、めの?」
俺から初めて拒絶された川瀬は、信じられない、という顔で俺の方に手を向けてきた。
離れていかないで
置いていかないで
知らない人みたいに
私から離れていくのはやめて
川瀬はそう言うかのように、俺に手を向けて、俺に触れようとして
そして、躊躇した。
「…ふっ」
思わずこぼれた声。
その声にびっくりして、川瀬は手を引っ込めた
俺が、離れていこうとしても触れるのを戸惑う仲