隣の席の姫野くん。
「姫野は他の男と違うって思ってたのに!」
のんちゃんの気持ちを考えると、動かずにはいられなかった。
のんちゃんの気持ちを考える余裕なんて、さっきはなかったのに。
自分が裏切られたわけじゃないって思えたから、自分が傷つけられたわけじゃないって思えたから
そんな余裕が生まれたんだろうな。
この余裕が、誰かの傷の上に成り立ってるなんて、私は知らなかったから。
また私は誰かを傷つける
「川瀬にとって俺は男に見えてた?」
姫野はさっきとは違う悲しそうな顔で、私に聞いた。
姫野が、男?
姫野だって、男だよね
そう、だよね
「姫野は姫野だよ」
そう言うしかなかった。
確認されなきゃ、姫野を男だって意識しないんだもん
姫野は、姫野。
私の中では姫野昂は男でも女でもない
姫野昂なんだよ