隣の席の姫野くん。



「私は逃げちゃったけど、姫野は逃げなかったんだね。しかも、私が傷付かないように自分を傷つけて。自分が情けない」



そこまで言うとのんちゃんは、ゆっくりと顔をあげた。



大きな目には涙が浮かんで、今にもこぼれ落ちそうだった。



「幸せはいつだって誰かの傷の上になりたっているの」




のんちゃんは私を真剣に見つめて、そう言った。



「だから、ただ幸せを満喫していてはダメよ。誰かの犠牲によって成り立っている幸せは、酷く残酷なんだから。」



そういい終えると、




「ねえ、人を傷付けて幸せでいるような私だけど、今は泣いてもいいかな」




のんちゃんは私に抱きついてきた。













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