幸せならそれでいい

 夜は顔も合わせなかった。

何度か私の部屋の前に来て話しかけてくれたけど
私は返事もせず無視。

お兄ちゃんとは会話無しで終わる。

このまま明日になって
早く帰って欲しい。

そして
朝になり

たくさん寝すぎて
私は早く目を覚ます。

おなかすいた。

ガサゴソと起き上がり
お祖母ちゃんからもらった綿入れを着て、下に降りる。

まだ陽も上ってない時間

リビングへ行くと
コーヒーのいい香りが広がっていた。

「あ……」
逃げられない。

「早いね」
お兄ちゃんがそこにいた。

「カフェオレ入れるね」って言われたので、反射的に私はうなずきソファに座る。

お兄ちゃんは手際よくカフェオレを作り
私にマグカップを渡してくれた。

温かいカフェオレ
甘くて美味しい
昔飲んだカフェオレと同じ味。

「この時間帯が綺麗だよね」
水色のシルクのパジャマ
体つきが柔らかい
胸もあるし

もう
身体も全て
女性なのだろうか

お兄ちゃんはカーテンの隙間から外を覗いていた。

「青なんだよね世界が」

「まだ太陽が昇ってないもん」
あたりまえって感じで言うと首を横に振る。

その仕草が王妃様のように優雅だった。

「雪の全てが微かに青くて、空気も空も全てが悲しいくらい青いの」

そんな事を言って遠くを見る
お兄ちゃんのまなざしの方が悲しく見えた。
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