吐き出す愛
*
――大人になるって、どういうことだろう。
成人する頃には、きっと過去に夢見ていたような自分になれると思っていたけど。
それは少し、違ったのかもしれない。
見た目も、纏うオーラも、自分を確かにする心も。
結局は努力して成長しようとしない限り、何一つ進歩しないんだ。
私はその成長するための大事な過程を、殻に閉じ籠って過ごしたのかもしれない。理想ばかりを、胸に抱いて。
だから20歳になっても私の心は、ずっとあの頃に置き去りなのだろう。
自分の世界を守ろうとしていた、未熟な15歳のあの頃に……。
金曜日の駅前通りを行き交う人の表情は、どれも活気で満ち溢れているように見えるから不思議だ。
週末って1週間の疲れが溜まるピークの日のように思えるけど、みんなは違うのだろう。土日に向けて、少しずつ元気を取り戻しているみたいだった。
まだ夕方の4時前。駅を利用している人の割合は学校が終わった学生が多いから、余計に休日である土日を迎えるのが楽しみなのかもしれない。
私も同じ学生のはずなのに、弾ける笑顔がキラキラしていて眩しかった。そう感じるときはいつだって、自分が世間から浮いている気がする。
取り残されてしまったような、寂しさが募るんだ。
「いらっしゃいませー」
感傷にふけるような気分で外を歩く人の姿を見ていたけど、ふと店内によく響いた声で我に返った。
振り返ってレジの方を向くと、ちょうど大学生らしきカップルが店内に入ってきたところだった。
自動ドアが開いて吹き込んだ風によって、店内の空気が揺らぐ。コーヒーショップ独特の豆の香りが、ブラウンで統一された空間でふわふわと回っていた。