吐き出す愛
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平和な1時間が過ぎて訪れた昼休みの時間。
有川くんは4時間目の授業が終わって先生が出ていくところを確認してから教室に入ってきた。
そして自席に置いてあったカバンからランチバッグだけを取り出すと、そのまま複数の友達を引き連れてそそくさとどこかへ行ってしまう。
教室に入ってきてから出ていくまで、有川くんは一度も私を視界に入れようとはしなかった。
きっと、私が言ったことを実行してくれてるんだ。彼の行動がその通りなのだとしたら一気に気が楽になる。
……だけど、どうしてだろう。
有川くんの行動を私だけが気にかけて見てしまっているのが、何だか悔しかった。
「別にさー、そんなに毛嫌いする必要なくない?」
有川くんとの出来事を話すと、親友の優子は苦笑を浮かべながら、お弁当箱の中の卵焼きをお箸で詰まんでそう言った。
いつも昼休みになると、私は教室で優子と昼食を食べている。
今日も同じようにお弁当箱を広げているけど、なかなか気分が優れなかった。
食欲は至って通常にあるけど、食べても食べても味気ない。
その理由はやっぱり、あの人とのことが胸に突っかかっているからだ。
「智也はさー、そりゃあチャラいとは思うけどね? でも、良い奴だとは思うよ。リーダーシップがあるから頼りになるし、話も面白いし」
「優子は有川くんの幼馴染みだからそう思えるだけだよ。あたしはとにかく、ああいうタイプの人は嫌いなの!」
空中で遊んでいた箸を下ろすと、優子に必死になってそう言うあまり、ふりかけを被ったお米たちに突き刺さってしまった。
有川くんの肩を持つ優子に言い聞かせるときは、いつもついつい力んでしまう。