吐き出す愛
優子は真面目な顔で力説するあたしを見て、うーんと首を傾げた。どうしてそこまで嫌うのか分からない、と言うみたいに。
私はお弁当箱に残っていたお米をばくばくと口の中に放り込む。冷たいそれは、やっぱり味気なかった。
空になったお弁当箱に蓋をしてさっさと片付ける。
優子は逆にゆっくりと蓋をしながら尋ねてきた。
「別に、苛められたことがあるわけじゃないでしょう?」
「うん、それはない。そもそも、接点すら今までなかったし。あんなふうに喋ったのだって今日が初めてだよ」
「じゃあ、何で? 佳乃はいつも智也のこと嫌いっていうけど、接点がないなら嫌いになるきっかけすらないんじゃないの? 何がそんなに嫌なの?」
パコン、と優子の手の中でお弁当箱が閉じられる。
私はその音を聞きながら、自分のお弁当箱に向けた視線を離せずにいた。
身体に重石が乗っている感覚がして、絞り出した声は弱くなる。
「……違いすぎるから、かな。だから嫌いなの」
「違いすぎる?」
「そう。私と有川くんはタイプが違いすぎる。容姿も性格も。あまりにも自分とかけ離れすぎてるから何だか嫌だなって思うし、関わりたくないって思っちゃうの」
顔を上げると、優子の表情が小難しいと言うように固まっていた。私の顔も徐々に曇っていく。
「……まあ、ね。タイプが違うと、嫌に感じることもあるかもね。じゃあ聞くけど、具体的にはどんなところが嫌いなの?」
優子が首を傾げながら聞いてくる。
その瞬間、廊下の方から大きな笑い声が何重にもなって聞こえてきた。離れていてもはっきりと聞こえる声はうるさいぐらいだ。