吐き出す愛
「……っ、」
……拒絶、されたみたいだ。
今の接し方が正しいのは承知している。だけどこのタイミングで有川くんがわざとそう接してくるのは、深い意図があるとしか思えなかった。
有川くんは一度だって、どんなときでも敬語なんて私には使わなかった。
それなのに今、わざわざよそよそしい態度に切り替えるってことは。
遠回しに、ここには二度と来るなってことを示してるのかな……。
一度そんな考えに辿り着いてしまうと、それ以外の可能性は見事に頭の中から消え去ってしまう。
おかげでカバンを受け取り、会計をしている最中も、胸の奥底で生まれて渦巻いているもやもやのせいで気が気でなかった。
会計を済ませたら、有川くんはどんな態度をとるのだろう。最後まで、営業モードを貫くのだろうか。
……分からない。
分からないことほど、怖いものはなかった。
それでも分かることが、ただ一つだけある。
遠回しな態度のままでも、明らかな態度に変わるにしても。
有川くんはきっと、私には関わろうとはしない。
そんな気がする。
だって15歳のときに私たちが選んだ未来は、こんなところで交わる必要がないのだから……。
会計を事務的に済ませると、有川くんや智香子さんたちのありがとうございましたの言葉を聞き終える前に店をあとにした。
うじうじとした気持ちのままでは、去ることを躊躇いそうになりそうで嫌だった。
だから余計な感情に揺さぶられる前に、さっさっと彼の前から去ろうとしたのに……。
早足で数十メートルを歩いたところで、容易く動きが止まってしまう。
……心は、止まったままの感情は、いつだって臆病なだけだ。
傷付くことばかりを避けるために、保っている世界を壊さないために。
ただ、すんでのところで逃げてばかりいるんだ。