吐き出す愛
「そんなの決まってんじゃん。この機会を逃したら、二度と佳乃ちゃんに会えない気がしたから。だから来たんだよ」
「う、そ……」
「嘘じゃねえって。……そんなに今でも、俺のことが信じられねえの?」
思わず口走った言葉に後悔したときにはもう、有川くんは悲しげな瞳で私を見ていた。
“今でも”
いつと比べてそう言ったのかは嫌でも見当がついてしまい、慌ててごめんと告げる。
それから言い訳がましいことを言った。
「……でもさっき、よそよそしい態度だったから。だから有川くんはもう、私には会いたくないと思ってるのかと……」
「あー……、あれね。あれは他のお客さんも居たし、いくら顔見知りでも一人だけに馴れ馴れしくするのはあんまり良くないと思ったんだ。それにいつまでも親しい雰囲気出してると、また姉貴に余計なこと口出されそうだったしさ」
有川くんは気まずそうに笑う。
その姿には拒否された雰囲気も感じないし、どう考えても嘘を吐いているようには見えなかった。
自分の勘違いなのかと思うと、とても申し訳なくて恥ずかしい。
再度謝ろうとするけど、有川くんの方が先に口を開いてそれは叶わなかった。
「……だからさ、別に会いたくないとか思ってねえよ。むしろずっと、会いたいと思ってた。だから今こうやって佳乃ちゃんと話せてるの、すげー嬉しいんだよ」
屈託のない顔で微笑まれて、全身にぶわっと熱いものが流れた。
ああ、この感じ。とても久しぶりで懐かしい。
温かくて、胸の奥がきゅっと苦しくなる。嫌ではないその感覚に、あっという間に心を持っていかれたような気がした。
……私も、会いたかったんだよ。
ずっとずっと影ばかり探してしまうほどに。
振ったのも拒んだのも私なのだから、今更だと言われてしまうかもしれないけど。
それでも会えて嬉しいと思う気持ちは、私も同じだった。