吐き出す愛
「……」
だけど、それを素直に伝えられない。
他にも思うことはたくさんある。でもどれも喉の奥に突っかかったままで、声にすることが出来なかった。
……自分のこういうところは嫌いだ。
都合の悪いときばかり、臆病になるところ。
唇を噛み締めて視線を泳がせてばかりいると、有川くんの方が口を開いた。
「……そうだ。良かったら今度、ご飯でも食べに行こうよ。再会した記念に」
「えっ……?」
「あっ、もしかして嫌だった?」
「ううん、違う! ただいきなりだから、びっくりしただけ……」
だってまさか、有川くんに食事に誘われるなんて思ってもみなかった。
15歳の日にもう関わらないという言葉を交わして別れたのだから、そんなことを言われるなんて想像もしていなかったんだ。
会いたい気持ちも私が一方的に思っているだけだと思っていたから、有川くんが同じ気持ちを抱いていて驚いているぐらいだし。
5年も経てば、あの頃の別れは気にしていないってことなのかな……。
小さな疑問が残る。
でも今は過去の亀裂なんて気にならないくらい、有川くんの誘いに心がざわついていた。
まるで、そう。有川くんとの初めてのデートのときみたいに。
そんな私の心を見透かしたのだろうか。
有川くんが楽しげに笑う。
「嫌じゃないなら、オッケーってことだよな。また日にち決めたら改めて連絡するよ。あっ、そうだ。連絡先教えて? 佳乃ちゃんの連絡先知らないし」
「う、うん」
有川くんがジーンズのポケットからスマホを取り出す。
バッグから自分のスマホを取り出すと、有川くんのペースに流されてあっという間に連絡先を交換していた。