吐き出す愛
初めて全身で感じる、有川くんの温もり。
よく繋いだ手のひらから伝わっていたそれとは全然違う。
ぴったり密着していても、暑さなんて苦にならない。
触れ合っている肌が、この瞬間を待ち侘びていたとでも言うように震えて喜んでいる。
胸板に耳をつければ、激しい鼓動を感じた。
自分のものが聞こえているのか、有川くんのものなのかは定かではない。
でも、私の胸の中心部が熱くなっているのは確かだ。
「あ、有川くん……?」
いきなり抱き締められて感じる間さえなかった恥ずかしさが、あとから駆け足で襲いかかってくる。
とりあえず名前を呼んでみると更にきつく抱き締められて、心臓が一際跳ね上がった。
高まる緊張から逃れたい思いで、縋るように有川くんの背中に手を伸ばすけれど、どうやらそれは間違いな選択だったみたいで。
甘く優しい声がすぐ側で囁き、耳元をくすぐられる羽目になった。
「……信じるよ」
「っ、」
「俺も佳乃ちゃんが好きだから信じる。俺が佳乃ちゃんを信じないわけがねえだろう?」
抱き合った状態から少しだけお互いの身体に距離を置いて見つめ合う。
自信満々で言う有川くんの弾けた笑顔に、私もつられて笑った。
有川くんは満足そうに微笑むと、再び私を引き寄せる。
有川くんが耳元に寄せてきた唇が紡ぐのは、今度は芯のある真面目な声だった。
「俺、すげー我が儘だよな。佳乃ちゃんに信じてほしいって思ってたくせに、ちっとも信じてもらえるような行動が出来てなかった。情けねえけど、弱かったんだと思う。自分に寄ってくる子たちのことをはっきりと拒めなかったのも、全部俺が悪いんだ」
「……」
「佳乃ちゃんに告白したあとも、なかなか拒めなくて……。自分勝手だけど、こんな俺でも佳乃ちゃんなら信じてくれるって都合よく考えてた。でも、逆だったよな。むしろ、佳乃ちゃんを苦しめるような態度ばかりだった。傷付けてごめん……」
有川くんの言葉で胸が一杯になる。
言葉が上手く出てこなくて、代わりに首を横に振った。