吐き出す愛






 席替えをした日から3日が経った。

 あの日から有川くんは隣の席に座っているときもそれ以外のときも、一度も声をかけたりしてこなかった。

 目さえも合わせない徹底ぶりで関わろうとしなかったから、ある意味すごくて尊敬してしまう。

 これは全部、私が望んだこと。それなのに、心はいまいちパッと晴れない。

 どうしてだろう。
 優子に言われたことが、少なからず影響しているのかな。


 でも、これで良いんだ。

 最初から関わるべき人だったわけでもない。
 だからこのまま卒業の日を迎えるまで、この穏やかな時間が続けばいい。

 そうであるべきなんだ。



 放課後。

 教科書をカバンの中にしまっていると、申し訳なさそうな表情になっている優子がカバンを持って席に寄ってきた。


「佳乃、ごめん。さっき急に先生に委員会の集まりがあるって言われて、一緒に帰れなくなっちゃった……」

「あっ、そうなんだ。委員会なら仕方ないね。今日は一人で帰るから大丈夫だよ」


 しょげている優子にそう言えば、安心したように頬を緩めた。
 その際に瞳が、ちらりと隣の主の姿がない席を見ていた。

 有川くんは掃除の時間からずっと姿を見かけないから、きっともうサボって帰ったのだろう。

 ……って、私には関係ないことだけど。


「佳乃、本気で智也に関わりたくないんだね」


 優子はそう言うと険しい顔つきになった。それから少し残念そうに眉を下げる。

 頑なに有川くんと関わろうとしない私だけど、優子は優子で相変わらず意思を曲げない。


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