吐き出す愛
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有川くんと思いを伝えあった日から、1週間後。
以前お母さんと電話で約束していた通り、私は夏期休暇を利用して実家に帰省していた。
そしてその帰省初日の夕方。
私は久しぶりに勉強机の一番下の引き出しを開けた。
引き出しの奥に設置してある小さな収納ケース。
その隅っこに眠らせていたものを、ゆっくりと取り出す。
久しぶりに目にしたのは、カエルのマスコットキーホルダーとプリクラ。
どちらも、有川くんが強引に誘ってきた初デートでの思い出のものだ。
引き出しの中にずっと入れたままだったけど、うっすらと埃を被っている。
その分だけ私と有川くんの間にも空白の時間があったのだと、改めて気付かされた。
それでも、ゆるキャラのカエルのピンクの色も、プリクラの鮮やかな色も、あの頃と変わらず色褪せないまま。
どちらもそっと撫でると、ざらりとした埃の存在を直に指先に感じた。
「懐かしいなあ」
5年前。
私は有川くんのことを忘れたい一心で、これらをここにしまいこんだ。
だけどその程度では結局、忘れることなんて出来なくて。
むしろあの頃からずっと、思い出に捕らわれたようにずっと有川くんの存在を意識してしまった。
おまけに今になって自分の気持ちに気付いて、付き合うことにまでなって……。
あの頃は想像もしていなかった未来を、私は今過ごしている。
不思議だなあ。
新しく広がる自分の世界は新鮮で不安もあるはずなのに、意外とすんなりと受け入れることが出来ている。
そんな自分には驚きで一杯だ。
でも、周りの人も、案外そうなのかもしれない。
キラキラとしていて眩しい世界を生きているように見えた同世代の人たちも、こうやって新しい場所に慣れていくのだろう。
戸惑いながらも踏み出す勇気で前に進み、変わっていくものたちを受け入れながら。