吐き出す愛
「そんなに長い方が好きなら……今の私は嫌い?」
下から有川くんの顔を覗き込んで尋ねる。
自棄になれば、意地の悪い言葉も簡単に出てくるから怖い。
恋をすると人は変わるというのは、あながち間違いでもないのかもしれないね。
強引な有川くんにドキドキしたり、ときには苦しくなったり。
有川くんの周りの女の子に嫉妬したり、ときには意地を張ってみたりする。
こういう自分は、徐々に“好き”を知って新たに出会った自分だから。
「佳乃ちゃんも、なかなか言うようになったじゃん」
「わっ……!」
ふっと笑って、私以上に意地の悪い表情になった有川くん。
それに驚きながらも見とれていると、繋いでいた手を引かれるのと同時に肩まで掴んで引き寄せられた。
一気に縮まる距離に慌てる私の顔のすぐ前に、端正な有川くんの顔があった。
真っ直ぐ見つめてくる瞳に飲み込まれてしまいそうで、身体が動かなくなる。
自信に満ち溢れていて、なおかつ穏やかな笑みを浮かべた表情に、心臓は一気に過剰な動きを始めた。
「――どんな佳乃ちゃんも、愛してるよ」
甘い響きに驚いて、胸がきゅっと高鳴るのも束の間。
有川くんの顔が近付いてきて触れた唇の温もりのせいで、頭の中も心の中も有川くん一色になる。
鼓動の早さを確認する間もないくらい、一瞬の出来事だった。
ぱちぱちと瞬きを繰り返している私を見て、有川くんはにっといたずらな笑みを浮かべている。
それに比べて私は全然余裕などなくて、有川くんの胸を叩いて密着していた身体を慌ただしく離した。
全身に熱が伝わるのを感じて、まともに有川くんの顔さえ見れない。