吐き出す愛
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20歳にとって特別なイベント、成人式。
毎年ニュース映像に映る華やかなそれに自分が参加する日なんて、まだまだ先だと思っていた。
だけど今、俺――有川智也は、市が開催する成人式会場のホールに来ている。
自覚なんかなくてもあっという間に大人になっちまうもんだなあと、やけに年老いた気分でしみじみと思った。
そういえば同じことを、20歳の誕生日に初めて酒を飲んだときにも思ったっけ。
ホールの外にも中にも、晴れ着に身を包んだ新成人やその保護者たちがわんさか居た。
みんなどこか浮かれた表情だ。祝いの場というのも理由だろうけど、やっぱり心が弾む一番の要因は、中学や高校の懐かしい旧友との再会だろう。
進学や就職で地元を離れた人も多いし、いくら親しい友人でも会う機会は自ずと懐かしいあの頃よりは減ってしまう。
だからこそ余計に皆、この貴重な場を通じて久しぶりに顔を合わす人たちとの会話や記念撮影に、空白の時間を埋めるような勢いで夢中になっているようだった。
色とりどりの振り袖姿の女子や、大人びた雰囲気でスーツを着こなす男子。
様々な子供だった人たちが様々な大人となって辺りに作っている輪を一つ一つ眺めながら、俺は知り合いが居ないかと探し歩いていた。
ちょうどその最中、ふと背後から声がかかる。
「智也、こっちこっちー!」
久しぶりに聞く声。でも、すぐに分かった。中学時代によくつるんでいた仲間だ。
「よう、久しぶりだな」
振り返った先には自分の存在を主張するように手招きをする友達が何人か集まっていて、俺も手を挙げて応えながら心持ち早足で懐かしい集団に合流する。
全員嬉しそうに笑う顔はあの頃みたいに無邪気で、俺もきっと今同じ顔してるんだろうなと、頬が緩むのを感じながら思った。