吐き出す愛
「久しぶりだなー、智也。おまえとは高校違ったし、5年ぐらいまともに会えてないよな」
「だな。おまえ市外の高校だったから、うろつく範囲も変わったし」
久しぶりの挨拶を交わしながら、ざっとみんなの姿を確認する。袴姿のやつもいれば、スーツ姿のやつもいて、それぞれの個性が際立っていた。
あの頃と比べて、それぞれ皆、日々過ぎていく時間の中で少しずつ変化したところもあるのだろう。
だけど青春時代を共に過ごした仲間は特別なもので、どれだけ時間に隙間が生まれて変わっていたりしていても、口を開けば一瞬であの頃に戻ったように、今この瞬間を何の違和感もなく共有出来る。
変わらない根本的な部分に変化というスパイスを加えて新たに大人の仲間入りした俺らは、そうやってまた繋がり合えること知っている。
「それにしてもおまえ、変わったなあ」
互いの近況を報告したり思い出話に花を咲かせている途中、ふと一人がちょうど喋っていた俺の顔をまじまじと見ながら、そんな一言を溢した。
特に深く考えたわけではなく自然に出たようなその言葉に、周りのやつらがまるで打ち合わせしていたような息ぴったりな間合いでさらに続けていく。
「分かる分かるー。この中だと、智也が一番変わったよな!」
「何かこう、落ち着いたっつうか、一皮剥けたっていうか……。とりあえず、良くなった感じがする」
「俺、智也とは高校一緒だったけど、その頃はまだ中学のままのノリだったのにな。卒業して会わないうちに、随分雰囲気変わったじゃん」
いつの間にか話のネタが俺の変貌っぷりに変わっていた。
みんな面白がって口々にやんちゃだった10代の俺の黒歴史を掘り起こしてくれるものだから、段々居たたまれなくなってくる。
まじで勘弁してくれ。