吐き出す愛
両サイドから二人に肩を組まれ、前後左右に立ったやつらが壁のごとく俺を囲いこんでくる。
素早い行動に戸惑う俺を余所に、興奮しきって好き勝手に喋りだす声が耳に入り込んできた。
「おい! 彼女って何だよ! そんなの俺ら聞いてねーぞ!」
「ここに来てるってことは、中学か高校が一緒ってことだよな?」
「えっ、俺らが知ってるやつ?」
「つうか、いつから付き合ってんの? 昔みたいに、また遊びで付き合ってる感じ?」
「いや~、さすがに智也も、そろそろ女関係はましになったんじゃね? 雰囲気落ち着いたし、そんな感じに見えねーもん」
「いやでもこいつ、高校のときはまだ色々派手だったからなあ。真面目に付き合い始めたと思ったら、相変わらずすぐ別れてたし」
「っつ、おまえら、好き勝手言いやがって……!」
俺が黙っているのをいいことに本当に好き勝手言い放題だったけど、さすがに俺も過去の恋愛話をされると黙ってはいられない。
確かに中学も高校も色々な子たちと付き合ってきたし、本当の意味で真剣に付き合っていないことも多々あった。
“好き”という感情が、自分の本当の気持ちが分からなくて迷走して、自棄になったこともあった。
そのせいで悲しませたり傷付けた子たちだって居る。
今隣に居てくれる彼女のことも……。
だけど、今はもう、軽い気持ちでなんて付き合ったりしていない。
たった一人。彼女だけが、俺の心に居るんだ。
子供だったあの頃から俺の心の中にぽつんと存在していたのに、上手く想いを育むことも出来ずに、身勝手に傷つけたりもした。
信じてほしかったくせに、自分は信じてもらおうと努力すら出来ていなかった。