吐き出す愛
……それでも、今。
あの頃と、空白の時間、また新たに共有する時間を乗り越えて、彼女は俺の隣に居てくれている。
俺が彼女を信じるように、彼女も俺を信じてくれながら。
「……真剣に、付き合ってる子がいるんだ。俺が中学の頃から、唯一本気で好きだと思ってる子だよ」
そのことを、こいつらにもちゃんと知っておいてもらいたかった。
未熟な愛し方しか知らずに最低な恋ばかり繰り返していた俺を知っている、こいつらだからこそ。
あの頃にも確かに好きだと思える恋をしていて、それが今になっても変わらない想いであることを、みんなにもきちんと信じてもらいたいんだ。
精一杯伝えようとする声は、いつになく真面目だった。まるで、彼女に想いを告げたときのように。
だからこそ、信じてもらえたのだろう。
全員茶化したりせずに、静かに聞いてくれていた。それから、自分のことのように嬉しそうに言ってくれる
「……そうか、ついにそう思える子が出来たんだな。おめでとう!」
「良かったな智也! そんだけ幸せそうな顔してるんだから、おまえが本気で好きなんだってことは十分分かるわ」
そう言われて一瞬、ついつい彼女のことを考えながらにやにやしてたのかと心配になった。
だけど自分でも気付かぬ間に顔に出すぐらい俺は今幸せなのだと思えば、それを隠すみたいに押し込める必要はないかなって思った。
幸せだと思うことは、素直に吐き出していたいから。
まあ、こんなことこいつらに言ったら、惚気んなよって呆れたように笑われそうだけどな。そうしたら、大事な友達にだからこそ見せる姿だって言ってやるよ。
「……っていうか、ちょっと待て。おまえさっき、彼女のこと中学の頃から好きって言ったよな……?」
祝福してくれたみんなに少し照れ臭さを覚えつつありがとうと返したら、ふと一人が何か思い付いたように口を開いた。