吐き出す愛
「……二人ともすっかり、ラブラブになったよね。中学のときに仲違いして別れたなんて全然思えないわ~」
佳乃ちゃんのいじらしい姿を見て頬を緩めていると、二人きりの気分だった世界に現実的で間延びした声が割り込んできた。
目の前の彼女しか映っていない視界をそっと広げてみると、佳乃ちゃんの隣に並ぶように一人の女子が立っていた。
緑色の振り袖姿のそいつは、佳乃ちゃんの友達であり俺の幼馴染みである優子だ。
気兼ねない存在だからこそ、少し気分を害された俺は、あっち行け、と手で追い払う仕草をしながら冷たく当たる。
「何だよおまえ。俺ら今二人きりで話してるところだから邪魔すんじゃねえよ」
「いやいやいやいや、あたしじゃなくてあんたがあとから入ってきたんだからね?」
「あ? どういうことだよ」
「あたしと佳乃が一緒に居るところに、あんたがやって来たんでしょうが! あたしが先に喋ってたんだから、邪魔したのはあんたの方だよ!」
「……マジかよ。佳乃ちゃんに夢中でおまえのこと全く見えてなかったわ」
「佳乃にぞっこんすぎだろ!」
猿みたいにキーキー喚く優子に言われて、マジで俺佳乃ちゃんにぞっこんだわ……と軽く嘲笑した。
いや、だって、冗談とかじゃなくて本当に優子のことが見えていなかった。
こいつの話によると俺が佳乃ちゃんを見つけたときにはすでに一緒に居たんだろうけど、今の今まで本当に存在が俺の視界には入っていなかったんだ。
「わりーわりー、幼馴染みより彼女優先で」
「謝られても虚しくなるだけなんだけど……。まあ、いいけどね。あんたが佳乃のことちゃーんと大事にしてくれてるなら」
「このぞっこんぶりなら大事にされてるよね?」と確認するように優子が佳乃ちゃんに問いかけて、佳乃ちゃんはそれに迷うことなく頷いた。
俺はそれだけで嬉しくなる。