吐き出す愛
信じてみようとする気持ちなら以前よりはある、けれど……。
それでもまだ、やっぱり心のどこかで疑ってしまうんだ。有川くんは軽い気持ちで私に近付いているんじゃないか、って。
今までの有川くんがそういう人だったからこそ、余計に。
でも有川くんはいくら私が受け身ばかりで素っ気なく対応していても、懲りずに私に関わろうとしてくる。
ちょっとしつこくて滅入るけど、少しずつそんな彼を受け入れても良いかな……って思い始めたのも事実だ。
だからこそ今、自ら誘うなんていうチャレンジをしてみたわけだけど。
小さな変化が自分の中で起きていることに気付いたら、急激に恥ずかしくなった。
私、こんな積極的なことするタイプだったっけ……?
ずっと保ってきた自分の世界が、有川くんと関わることで広がっていく。
そんな気がして戸惑う私を余所に、有川くんは適当に参考書を持って嬉しそうに言った。
「……まあ、気まぐれだろうがたまたまだろうが、理由は何でもいっか。佳乃ちゃんが誘ってくれたことには変わりねえし。つうか、そうと決まれば早く勉強しようぜ?」
「う、うん。そうだね。でもその前に問題集借りてくるから、先に行っててくれる?」
「おー、分かった。席取っとくわ」
「ありがとう。じゃあ、またあとで」
先に学習スペースに向かう有川くんの背中を見送るのもそこそこに、貸し出し用のカウンターへと足を進めた。
早足になりすぎて、足が絡まりそうになる。
その焦りが伝わっているのは身体だけではなくて、何か、心がそわそわして落ち着かない。
有川くんを誘うなんて、ほんと……何やってるんだろうな、私。
いくら優子が勉強に付き合ってくれなくて一人とはいえ、別にわざわざ誘わなくても……。