吐き出す愛
でも、きっと。
こう事毎に細部まで疑って考えてしまっている限り、私は有川くんのことを信じられていないんだろうな……。
信じてみたい気持ちと、まだ怖くて疑ってしまう気持ち。
複雑な気持ちがない交ぜになって頭がパンクしそう。
だけど今はその気持ちに決着をつけのは難しそうだったから、振り切るように問題集とノートを広げた。
有川くんとそれから肩を並べて、早くも2時間。
私は2時間前とはまた違った意味で、頭がパンクしそうになっていた。
「だから有川くん、この場合の“like”は“好き”っていう意味じゃなくて、“~に似た”っていう意味で訳さなきゃダメなの」
「えっ、“like”ってそんな意味もあんのか! 何かややこしいな~……」
有川くんは顔を歪ませながら、参考書を眺める。それから困ったように頭を掻きながら、私が説明したことを必死にノートに書き込んでいた。
そんな姿に苦笑しながら、自分の手を動かす。でも有川くんのことが心配すぎて、問題文がいまいち頭に入ってこない。
だから結局、私は自分の問題を解くよりも、有川くんに教えることに時間を費やしていた。
……有川くんには面と向かって言えないけど、彼の知識不足にはかなり驚かされたなあ。
一番苦手だという英語の長文の訳し方を教えると、決めたところまでは良かった。ただあまりにも単語の意味を知らなさすぎて、なかなか翻訳出来ない。
接続詞の使い方などを教える以前に単語の理解からしてもらわなくちゃいけないのは、まさかの展開だった。
これは本当に、参考書の内容を理解するだけでもギリギリかも……。
受験日まであと1週間と少し。
今から真面目に勉強しても有川くんが参考書の中身をすべて理解出来るのかと、とても心配になる状態だった。