「涙流れる時に」

妻・美弥とは夫婦生活がない。だから旅先に来ても恭平は夜、孤独だった。

「こんな刺激的な夜はない。」百合と交わったとたん、今までにない快感で恭平の体は震えた。

百合の感じる姿はなんとも美しい。男の悦ばせ方をわかる女だ。

そしてこれは不倫相手・るみ子にもない感覚で・・・

若いるみ子の中よりも抜群に良かった。熟した女の中。我慢ができない・・・

恭平は百合との交わりに完全に我を失った。

美弥のことも、るみ子のことも忘れるくらいの快感で。

「最高だよ。」恭平はその晩、百合を離さなかった。

「私も・・・」百合もまた、恭平に身を任せている自分に優越感を感じた。

「一度だけなんだけど・・・」

男はみんなそう、自分の中を一度でも味わうと、瞬く間に彼女の虜になった。

恭平も同じ。「好きなだけすればいいわ。」百合は激しく腰を振り何度も果てた。

一晩だけの恋人のように愛し合う２人。

イクたびに２人は熱い口づけを交わしていた。

全身汗だくの百合はそれでも、自分からお尻を突出し男を求める

「なんてイヤらしい女なんだ」恭平はそんな百合の態度に

激しく答えた。

もうすぐ朝なのに、狂い求める２人。恭平はもう後には戻れないほどの感情で百合を抱いていた。

「もう戻らなきゃ。」恭平は時計を見ると午前５時。隣の百合はグッタリと全裸でうつ伏せになって寝付いてしまったのか・・・。

「来週は東京に戻ります」ムクッと起き上がり、そっと囁く百合。

「じゃあ、また逢ってくれる？」

「どうかな・・・」

百合はそっと連絡先を渡すと、恭平を見送った。

「夢か・・・」

「でもまた逢いたい・・・」恭平は本心

「またこの女としたい」そう思ってしまう自分がいた。名残惜しいが、百合と別れたあと

そっと部屋のドアを開け、寝室に眠っている美弥を確認した。

翌朝、

恭平は美弥をなんとなく気遣った。何事もなかったように、いや、美弥は気が付いていない。

美弥の体調がいいことが何よりで、今朝は珍しく美弥から恭平に寄り添った。

「いつもごめんね・・・。できなくて。」

「いいよ。無理しないで。」夫婦生活のないことに罪悪感を感じている美弥。

「好き」

美弥からのキスはとても真っ直ぐで

恭平はその気持ちに癒された。昨日の百合に対する「欲情」までには至らない穏やかな感情。

「美弥。愛してる。」恭平は美弥を抱きしめた。愛おしい妻には変わりはなかった。