「涙流れる時に」
5 敵
恭平たちも、そして百合もまた旅先から帰ってきた。

変わらぬ日常は始まり、でも、何かが狂いだした。

「いってらっしゃい。」美弥は夫を送り出す。

送り出してから、美弥は落ち込んでいた。

「またできなかった。」恭平のことだった。

「恭平に抱かれたい・・・でも怖い」美弥の心の傷は深い。

「今日は通院か・・・」美弥は実家の母に付き添われ、かかりつけの精神科へ出かけた。

「どうですか・・・最近は?」担当は皮肉にも男性の医師しかいない。

「ええ・・・まぁ・・・」美弥は入院当時から、なかなか医師に心が開けなかった。

医師として優秀だが、美弥にとってはただの男。2人きりには決してなれない。

でも、入院をしているうちに、美弥には恭平という強い味方ができて

男性に対する拒絶感は日に日に薄れ・・・

さらに、百合に出会ってからは斉木のことも受け入れるようになっていった。

斉木と百合は仲が良くって、安心できた。恭平とも結婚が決まると2人ともすごく喜んでくれたから。

「斉木先生って百合のこと好きじゃないの?」

「え?まさか・・・」

「美弥はいいよね。素敵な彼氏がいて」

「うん。幸せ」

「・・・・ふーん・・・」百合はうつむいた・・・
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