さみしがりやのホットミルク
「あ、オミくん、まだダメだよー」

「え」



もう手当てはこれで終わりだと思っていた俺は、佳柄のその言葉に目を瞬かせた。

救急箱をごそごそしながら、彼女はちらりと俺を見る。



「おなか。さっきから、かばってるでしょ? 見せてー」

「──、」



……気付かれていないと、思っていたのに。

思いがけないその指摘に、とっさに口をつぐんでしまう。

だけどすぐにハッとして、俺は片手で彼女を制した。



「いや、別にたいしたことないから。気にすんな」

「そんなことないでしょお? オミくん、ちょいちょい痛そうな顔してる」

「してねーよ、」

「いいから、ハイ! おなか見せる!!」

「………」

「ハイ!!」

「……はあ、」



語気を強める佳柄に押され、ため息をつきながら、ワイシャツのボタンを外していく。

そうして腹筋のあたりがあらわになると、目の前の佳柄の顔は、今日1番の苦い表情になった。
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