さみしがりやのホットミルク
「あ、の、ひとは?」
「え?」
「あの人……昔、オミくんと、一緒にいた……」
「……ああ、伊月のこと?」
テーブルにマグカップを置いたあたしの問いかけに、オミくんが目を瞬かせる。
「伊月も、組の人間だよ。俺の世話係みたいなものも任されてたけど、それ以外は、普通に外の仕事にも行ってたみたいだし」
「……そう、なんだ……」
あの、大人の人。伊月さん。
はっきり顔までは、思い出せないけど……それでも、やわらかい物腰ととても丁寧な言葉遣いが、ぼんやり、印象に残っている。
あの人も、“やくざの人”、なんだ……。
そして──オミくんはいずれ、そのトップに立つ人。
平凡に生きているあたしからは、とても、遠い、人。
「ずっと、黙ってて悪かった。……佳柄には、言えなかったんだ」
「………」
「このことを、話して……もし、嫌われたらって。もう一緒にいられなくなったらって、思うと」
……こわくて、言えなかった。
そうつぶやきながらオミくんは、うつむいていた顔をあげて、あたしの方に視線を向けた。
そして、目が合った瞬間。不意に、その表情が苦しげにゆがむ。
「え?」
「あの人……昔、オミくんと、一緒にいた……」
「……ああ、伊月のこと?」
テーブルにマグカップを置いたあたしの問いかけに、オミくんが目を瞬かせる。
「伊月も、組の人間だよ。俺の世話係みたいなものも任されてたけど、それ以外は、普通に外の仕事にも行ってたみたいだし」
「……そう、なんだ……」
あの、大人の人。伊月さん。
はっきり顔までは、思い出せないけど……それでも、やわらかい物腰ととても丁寧な言葉遣いが、ぼんやり、印象に残っている。
あの人も、“やくざの人”、なんだ……。
そして──オミくんはいずれ、そのトップに立つ人。
平凡に生きているあたしからは、とても、遠い、人。
「ずっと、黙ってて悪かった。……佳柄には、言えなかったんだ」
「………」
「このことを、話して……もし、嫌われたらって。もう一緒にいられなくなったらって、思うと」
……こわくて、言えなかった。
そうつぶやきながらオミくんは、うつむいていた顔をあげて、あたしの方に視線を向けた。
そして、目が合った瞬間。不意に、その表情が苦しげにゆがむ。