さみしがりやのホットミルク
「ごめん、佳柄、ごめん……」



こちらに伸ばされたオミくんの手は、一瞬、ためらうように動きを止めて。

だけどそのまま、あたしの頬に触れた。



「……ッ、」

「ごめんな、俺のこと、こわいよな……ごめん……っ」



彼が、表情を変えたのは。

あたしがまた、ぼろぼろと涙をこぼしていたから。



「……う……っ」



とめどなく頬を流れるしずくが、オミくんの指先を濡らしていく。

とまれ、とまれと強く念じても、1度決壊してしまったそれは、簡単には止まってくれそうになくて。



「ッ、こ、わくない……こわく、ない……っ」



言いながら、必死で首を振るけど、涙を流したままのそのせりふは、とても嘘っぽく聞こえてしまう。

あたしはぎゅっと目を瞑って、ブラウスの胸元を片手でおさえた。


──違うの。本当に、オミくんのことが、こわくなったわけじゃないの。

オミくんが、極道の家を継ぐ人間だとわかっても。……自分とは、生きる世界が違う人なんだって、思い知らされても。

きみに対するこの想いは、1ミリだって、変わらなかったの。



「ッふ、う……っ」



……ただ、あたしの胸が、ちぎれそうに痛いだけ。

ただ、きみのことが、いとおしくていとおしくて、たまらないだけ。
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