さみしがりやのホットミルク
本当は、道ばたで寝転がるきみを見つけた、あのとき。

傷だらけでまとってる空気がこわくて、知らないフリで通り過ぎてしまおうと、してたの。

けれど、ふと目に入ったきみの横顔が、なんだか今にも泣き出してしまいそうに見えたから。

真っ青な空を見上げるその瞳が、さみしそうに、見えたから。

だからあのとき、声をかけたんだよ。

ウチに来る?ってあたしの言葉に、うなずいてくれて。本当に、うれしかったんだよ。


……だけど。

この、からだの大きな男の子は。

ずっと、あたしと一緒に過ごしながらも、人知れずおびえていたのだろうか。


──嫌われるのをおそれて

──居場所がなくなるのをおそれて

──……あたしが離れることを、おそれて。


そんなのって、あまりにも、切ない。

切なくて、……なんて、いとおしい。



「……佳柄……」



苦しげな表情をしたオミくんが、苦しげに、あたしの名前を呼ぶ。

だけど見つめるその瞳は、どこか熱っぽく、扇情的で。

近付いてくる彼の顔に、あたしが抵抗もせず、目を閉じると。一瞬の間の後、くちびるに、あたたかいものが触れた。



「……ん……っ」



角度を変えて、彼の舌があたしの舌を絡めとって。どんどん、どんどん、深くなるキス。

ゆっくり、少しずつ彼が体重をかけてくるから、それと比例するように、あたしはベッドへと沈んでいく。

酸素が足りなくて、だけど気持ち良くて、頭がぼーっとしてきた頃。ようやくオミくんが、くちびるを離した。
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