さみしがりやのホットミルク
……よかった。病院なんて行ったら足がついて、間違いなくあの人たちに気付かれてしまう。

おそらくまだ、本格的に俺の行方を探そうとはしていないだろうけど……危ない橋は、避けた方が無難だ。


そんなことを考え、ふと佳柄に視線を向けると。まるい瞳が、思いがけなくじっとこちらを見上げていて。

その、何かを透かし見られているような眼差しに、ぎくりとした俺は。自分から、絡まった視線を逸らした。



「……そういえばさっき、飯炊ける音、しただろ」

「あっ、そうだったね! 今ゴハン作っちゃうから、テレビでも見ながら待ってて~!」



リモコンを操作して立ち上がった彼女は、コート掛けから花柄のエプロンを取り外してつける。

そうして冷蔵庫を開けていくつか食材を取り出すと、手際よく調理し始めた。



「………」



それを見ながら俺は。自分の後ろに置いてあるベッドに、背中を預けて。

彼女には気付かれないよう、深く、ため息を吐いた。
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