さみしがりやのホットミルク

「1番大事なこと、聞いてない」

『ふふ。佳柄ちゃんが組の所有するどこかの建物にいるなんて、嘘よ。……本当は──』



さっきまで俺がいた、組長の部屋。

そのふたつ隣りにある、母さんの部屋の前に立って。俺はふっと息を吐いてから、その障子を開けた。



「……佳柄、」

「……!」



つぶやいた俺の声に、床に座り込んでいた佳柄が、パッと顔をあげた。

わきに控えていた組員たちも気が付いて、各々俺に声を掛けてくる。



「うん、ごめんな。……ありがとう」



その言葉にうれしそうにうなずき、ふたりの組員は一礼してから、部屋を出て行った。

残されたのは、俺と、佳柄のふたりだけ。



「……オミくん……ひっく、」



彼女はいまだ、ぽろぽろと涙をこぼしていた。

その濡れた顔を見て、思わず苦笑する。


……なんだか最近、泣かせてばかりだ。

本当は、この子には、いつだって笑顔でいてほしいのに。


俺はゆっくりと、彼女の前にひざをついた。
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