さみしがりやのホットミルク
驚いたような顔をした彼女を腕に座らせるようにしながら、高く、持ち上げる。



「っわ、わ」

「……言ったな。もう、なかったことにできないからな」



俺がわざと挑戦的に口角をあげてそう言うと、佳柄があはは、と声に出して笑った。



「大丈夫だもん。あたしオミくんのこと、だーいすきだもん!」

「ふは、……じゃあ──、」



彼女を抱きあげたまま、まっすぐに、視線を合わせる。

最大級のいとしさを込めて、その瞳に、問いかけた。



「ウチはこんなで、全然普通じゃない世界だけど……さらっても、いいですか?」

「……ッ、」



──ずっと、自分の未来に、不安を持っていた。

自分は本当に、この家のリーダーに相応しいのだろうか。

本当に、この家を守っていけるのだろうか。


……だけど、きみとなら。

きみとなら、明るい未来が、簡単に想像できるんだ。

きみが、いるだけで。きっと自分は、どんな困難にでも、立ち向かっていける。

立ち向かっていける、強さになる。


佳柄は逸らすことなく俺の目を見ながら、泣き笑いの表情で、大きくうなずいた。



「……オミくんがいるなら、よろこんで!」



──きっと俺は、この日の記憶を。

一生、強さに変えて、生きていけると思った。
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