さみしがりやのホットミルク
#XX.エピローグ
* * *
今年もまた、桜の季節がやってきた。
鳳家の庭には、ずっと昔から大きな桜の木があって。この家の者や訪れる客人たちの目を、楽しませてくれている。
俺が大学を卒業して背中に刺青を入れてから、4度目。
佳柄とふたり、互いの左手薬指にお揃いの指輪をつけるようになってから、2度目の春。
「……ただいまぁ」
カラカラと玄関の戸を開く音とともに間延びした声が耳に届いて、俺は顔をあげた。
手にしていた子難しい書類を多少乱暴にテーブルへ放り投げたところで、佳柄がひょっこり、居間へと顔を出す。
「あ、オミくん、ここにいたんだね」
「うん。おかえり、佳柄」
「ふふふ、ただいま」
言いながら彼女は俺の座るソファーまでやってきて、隣りに腰をおろした。
そのふわふわの髪を梳くように撫でると、気持ち良さげに肩へと寄りかかってくる。
甘えるようなその仕草に、最近忙しくてあまり構ってやれてないからなあ、と少しだけ申し訳なくなりながら、頭のてっぺんに軽くキスを落とした。