さみしがりやのホットミルク
「あれ、家族の写真?」

「え?」



俺の言葉に一瞬きょとんとした佳柄が、俺の視線の先へ同じように顔を向けた。

同時に、写真をよくよく見てみると。1枚はどこか海らしきところで、佳柄と男性と中学生くらいの男子が、ピースサインをしているもので。

そしてその隣りに置かれていたのは、やさしげな笑みを浮かべた女性が、ひとりで写っている写真。


──あ。

言葉を発してしまってから、不意に浮かんだ予感に。ひやりと、胸の中が冷えた。

ああ、やばい。

これは、たぶん──……。


テーブルの向こうにいる彼女が、写真に目を向けながら、口を開く。



「ん、そうだよー。何人か写ってるのは、お父さんと弟とあたし。その横の美人さんは、あたしが小6のとき、死んじゃったお母さん」

「……ごめん、」



ああ、やっぱり。

そう考えつつも、思わず謝罪した俺に、佳柄はまた笑う。



「なんで、オミくんが謝るの? あたしが、お母さんのこと思い出して悲しむと思ったの?」

「………」

「やさしい子だねぇ、オミくんは」



言いながら佳柄が、コトンとスプーンを皿の上に置いた。

……違う、俺はそんなんじゃない。

彼女の言葉をそう否定したいのに、視線を落として微笑む佳柄から、目が離せない。

またそのくちびるが、小さく動いた。
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