さみしがりやのホットミルク
顔を洗って洗面所から出てくると、テーブルの上には、すでに朝食が用意されていた。

焼きたてのトーストと、ベーコンエッグ。

ふとんをたたんで寄せてできたスペースに座ったそのタイミングで、マグカップが目の前に置かれた。

ふわりと香ったそれは、昨日も嗅いだ覚えがあるもので。



「……カラメルホットミルク……」

「オミくん、それ気に入ってたみたいだったから。お茶も飲む?」

「いや、いい」



首を振った俺に「そ?」と軽く首を傾けて、佳柄も目の前に腰をおろした。

いただきます、と言ってから、まずはマグカップに手を伸ばす。



「──、」



こくん、とひとくち飲み込むと、起き抜けのからだに染み渡るやさしい甘さ。

思わず肩の力を抜いた俺を見て、ふふっと、彼女が突然小さく笑った。



「あは、ごめんごめん。あたしも昔よく、お母さんにカラメルホットミルク作ってもらってたなあって」

「……作り方、母親に教わったのか?」

「うん、そう。これだけは、作り方教えてもらってたんだあ」



言いながら彼女は、マグカップを両手で包む。
< 33 / 144 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop