さみしがりやのホットミルク
「そいえばオミくん、今日は何か予定あるの?」



カチャカチャと洗い物をしながら、佳柄が肩越しに振り返って訊ねる。

ぼんやりと佳柄の家族写真に目を向けていた俺は、少しだけハッとして。彼女へと顔を向けた。



「ああ……とりあえず、学校行って金取ってきて、それから着る物とか買いに行こうとしてたけど」

「んー、そっかあ」



そう言って、佳柄はなんだか少し考えるような素振りを見せた後。



「ね、あたしも買い物一緒に行っていい?」

「は?」

「さすがに、学校にはついて行かないからさ。あたしも買いたいものあるし」

「……別に、いいけど」



了承してしまってから、はたと気付く。

外を、彼女と一緒に出歩くっていうのは……マズイ、よな?

だって、これでもし、佳柄とふたりでいるところを誰かに見られたりしたら──。



「ふふふ、やったあ! ありがと、オミくん」

「………」



……いろいろと、思うところはあるけれど。彼女が、なんだかうれしそうにするから。

だから俺は「やっぱり駄目」という言葉を飲み込んで、代わりに小さくため息をついてから、機嫌良さげな彼女の後ろ姿を見つめていた。
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