さみしがりやのホットミルク
俺の名前を呼ぶ光の声を無視して、佳柄のもとへと戻った。

ひとりで歩いてきた俺を見て、佳柄が小さく首をかしげる。



「あれ? ぴかるんくん、もういいの?」

「ぴ……ああ。アイツはそろそろ帰るって」

「そっかあ」



光のあだ名らしい単語に一瞬つっこみかけたけど、やめておいた。

何ていうか、つっこむだけ無駄だって思ったし。


彼女はぴょこりと首を横に倒し、俺のからだで隠された向こうにいる光に顔を見せる。



「ぴかるんくん、ばいばい~!」

「ぴかるん?!」

「(まあ、そうなるよな……)」



突然の自分へのあだ名に戸惑いつつも、光は彼女に手を振り返しながらどこかに向かって歩き出した。

その後ろ姿を見送った後、佳柄はくるりとこちらを振り向く。



「真面目で有名な隼高校にも、ぴかるんくんみたいな金髪ピアスの子いるんだね!」

「……まあ、アイツはレアケースだろうな」

「へえぇぇ」

「……ほら、俺らも行くぞ」



感心したように目をまるくする彼女の手から、服屋の紙袋を奪って小さく呟いた。

そんな俺に、またうれしそうに笑った佳柄と。再び、人ごみの中を並んで歩き始めた。
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