さみしがりやのホットミルク
「………」



まっすぐ、寄り道もせず。今日は帰りが遅くなるという佳柄のアパートに、戻るつもりだった。

……だけど、この状況は。



「よぉ、おにーさん。今学校帰り?」

「……誰。あんたら」

「まあ、オレらと会うのは初めてだわな。覚えてる? 先週の土曜にここで、あんたにボコられた男の仲間なんだけど」

「……ああ……」



思い当たって俺は、つぶやきながらスッと目を細める。

あの日と同じ、佳柄のアパートへと続く道で数メートル先に立ちはだかるのは、いかにもガラの悪そうな男ふたり。ついでに、頭も良くはなさそうだ。

私服だし、普通に、ふたりとも成人してそうだけど。こないだ絡んできたやつの、兄貴分ってとこか?



「悪いけど俺、あんたらに構ってるほどヒマじゃないんだけど」

「まあ、そう言うなよ。こないだうちのがやられた分、返させてもらえればいいから」

「………」



にたにた、下卑た笑いを浮かべるそいつらに、嫌悪感から自然と眉をひそめた。

……うっとうしい。これだから、集団でしか己を誇示できないやつらは。

ぎり、と思わずこぶしを握りしめると、それに気付いた背の高い男が、ピュウっと口笛を吹いた。
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