さみしがりやのホットミルク
「美味い……」



自然に、ほんとに自然に、口からこぼれ出た言葉。

あたたかくてやさしい甘さが、ケンカしたばかりの、ささくれたからだにしみわたって。

思わず手の中のマグカップを見つめる俺に、楽しげな笑い声が届く。



「ふふっ、気に入ったみたいだね。それね、正式にはカラメルホットミルク。お鍋で砂糖をカラメル状にしてから、牛乳と混ぜるの」



言いながら女は、すとん、と俺の隣りに腰をおろした。

見るとその手には、救急箱が抱えられていて。



「ごはんの前に、傷の手当てね。ケガしてるとこ、見せてー」

「……別にいい」

「ダーメ! はい、とりあえず右腕からー!」

「………」



ほとんど無理やりなそのせりふに、しぶしぶ、俺はワイシャツのそでを捲った。

現れたすり傷に、女はそうっと、水で濡らしたティッシュをあてる。



「うう……痛そう……」

「………」



ケガをしている本人より、なぜだか手当てしているその女の方が、痛そうに顔をゆがめている。

そんな様子を斜め上から眺めていると、不意に、その顔がこちらに向けられて。

思いがけなく、心臓がはねた。
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