さみしがりやのホットミルク
……そっか。オミくんは、家出したって、言ってたけど……きっと、家族の人は、探してるよね。

ほとんど無理やり、あたしが引き止めちゃって。それに言いたくないことなら、あたしも訊かないでおこうって……家出の理由も、訊いていないけど。

よく考えたら、あたしは、彼のフルネームすら知らないけど。

彼にも彼の、それまで歩んできた人生があるんだ。



「……ッ、」



そこまで考えて、ハッとする。

……オミくん、は……彼女とか、いないのかな。

すきな女の子、とか。いないの、かな。


だってオミくんは、ほんとはやさしい子だもん。やさしくて、いい子だもん。

だから、きっと……オミくんのことすきになっちゃう女の子も、たくさん、いて……。

だからオミくんに彼女がいたって、それは当然、有り得ることで……。



「っえ、ちょ、佳柄?!」

「どっ、どうしたの?!」



目の前に座るふたりが急にあわて始めるから、なんだろう、と思って顔を上げた。

すると自分の頬に、なんだか濡れたような感覚がして。

触ってみると指先には、透明なしずくがついていた。



「どうして佳柄、泣いてるのっ?!」



そのはすみんの言葉に、ああ、って、理解する。

ああ、あたし、泣いてるんだ──。
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