さみしがりやのホットミルク
「オレ……前に、遠くからだけど“あの”伊月と並んで歩いてるそいつ、見たことある」

「はあ?! イヅキってあの、オオトリの……冷酷無慈悲で笑いながら人の骨ぶっ壊すとかいう恐ろしい奴だろ?!」

「うわ、やべーよ、逃げっぞ!」



言うが早いか、ふたり組は「覚えてんなよ!」というダサい捨てぜりふを残し、バタバタと去って行った。

俺は思わず呆然としながら、上半身を起こしかける、けど。殴られた腹がずきりと痛んだので、再び地面に寝転がる。


これは……助かった、のか。

つーか、笑いながら骨ぶっ壊すって……伊月の野郎んなことしてんのかよ。ゲスいヤツ。


ふーっと深く息を吐いて、軽く右手を持ち上げる。

……『誰かが傷つけないように』、は、無理だったけど。『誰かを傷つけないように』は、守れたか。

まだ明るい空の下、太陽の光を受け、ラピスラズリがきらりと輝く。

ぎゅっと右手を握りしめてから、また、その手を地面におろした。

ここが道ばただということも気にせず、俺はそのまま、目を閉じる。
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