さみしがりやのホットミルク
小さく、声が聞こえた気がした。

最初は、空耳かと思ったけど……その声と足音はどんどん、近付いてきて。

今度ははっきりと、言葉が耳に届く。



「……オミくん……っ!」

「──ッ、」



まさか、と思って首をめぐらすと、小走りにこちらへ向かって来ているのは、間違いようもなく、佳柄で。

彼女は俺と目が合うと、さらに足を早めて、目の前までやって来た。

そして俺が、からだを起こそうとするより先に──。



「お、おみ、オミくん……っ」

「ぅわ、」



地面にひざをつけた彼女に、思いきり、頭を抱きしめられる。

見ると彼女は、ぼろぼろと涙を流していて。だけどそれに構うことなく、ぎゅうぎゅう苦しいくらいに、俺を抱きしめていた。



「な……佳柄、なんでここに……」

「だ、だって、オミくんが、様子、変だから……!」

「は?」



俺の質問の答えになっているようなそうでないようなことを返し、やっぱり佳柄は、オミくんオミくん言いながら泣き続けている。

そうして彼女は俺の頭を自分のひざに乗せるようにして、ようやく、手を離した。

その細い指先が、切れた口の端に触れる。
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