さみしがりやのホットミルク
「オミくん、いたい? いたい?」

「べ、つに、そんなんでも……」

「うそ、痛いんだ……っオミくん、ふぇ、オミくん……っ」



まるで子どもみたいな様子の佳柄に、ふっと、思わず苦笑がもれる。


ほんとに……この子は。

これだから、……目が、離せないんだ。



「……なに、泣いてんだ」

「っう、……ひっく、」

「……いつでも笑顔、なんじゃなかったのかよ」



言いながら、初めて会ったときと同じく逆さまに見えるその顔に、手を伸ばす。

赤くなった目じりに触れると、指先を、涙が濡らした。



「ひっ、く、……だ、だれかのことを想って泣くのは、いいって……っお母さん、言ってたもん……!」



ぽろぽろ、ぽろぽろ。透明なしずくが、止まることなく彼女の瞳から溢れ出る。


……ということは、この涙は。

俺を想って、彼女が流しているものだということで。



「……ばかだなあ、佳柄」



だけど、自分のために流される、その涙は。

とても、とても綺麗で、愛おしいものに見えた。
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