さみしがりやのホットミルク
「ん、よし、っと!」



そんな掛け声とともに、最後の絆創膏が、俺のひたいの端に貼られた。

右腕、両足、顔と、消毒と絆創膏をくり返して。結局、佳柄がストックしていた絆創膏はほとんど使い果たした。

ちなみに、頬の傷に貼られそうになった絆創膏は、全力で拒否して消毒だけに留めた。なんか、やんちゃっぽくてガキみたいだし。



「……さんきゅ」



ぽそり。ここに来て、初めて俺は、小さくお礼の言葉を口にした。

本当は、もっと早く、言えればよかったんだけど。

河川敷で彼女に会ってからの、この突然の展開に戸惑ってしまって、それから照れくさくて、結局ここまで言えなかったのだ。


うつむきがちに視線を逸らしていた俺に、一瞬、きょとんとした後。

それから彼女は、ふわりと笑った。



「いーえ」

「………」



なんだか気恥ずかしくて、俺はやはり視線を合わせないまま、またホットミルクを口にした。

まだほんのりあたたかいそれは、甘くて、じんわりとからっぽの心にしみていくようで。

……なんだか、まるで──……。
< 9 / 144 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop