さみしがりやのホットミルク
「気付いたのは、最初にこうやって、傷の手当てしてるとき。ホクロを見つけたのもそうだけど、見れば見るほど、あのときの男の子の面影があったから」

「………」

「……あのね、あたしの中で、オミくんはずっとヒーローだったの。だって、『誰か助けて、誰か助けて』って思ってたら、目の前に現れてくれたんだもん」



話しながら、彼女は救急箱に薬をしまった。

今度はマグカップを手にとって、それを両手で包むように持つ。



「もっかい、会えて。……うれしかったの。だから、つい、引きとめちゃった」



ワガママでごめんね、と、佳柄はホットミルクに視線を落とした。

笑っているけど、落ち込んでいるような、その表情に。またぎゅっと、胸が締めつけられる。


そんな彼女を、見下ろしながら。ゆっくり、口を開いた。



「……俺は、うれしかった。佳柄に、引き止めてもらえて。ここに、いさせてもらえて」

「………」

「……うれしかったよ」



そう言って、マグカップを支える彼女の小さな手に、自分の左手を重ねた。

佳柄は、こちらを見上げて。涙目で、微笑んだ。



「……ありがとう、オミくん」



目の前の彼女の顔が、あのとき泣き笑いで自分に礼を言った少女と、重なる。

どうしようもなく、切なくなる。

佳柄がこくりと、ホットミルクを一口飲んだのを見てから。俺は、覚悟を決めて、彼女に触れる手に力を込めた。



「佳柄は……『鳳組』って、知ってる?」
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