さみしがりやのホットミルク

「……ぜんぶ、見せてよ」

あたしの手を包むオミくんの左手に、少しだけ、力がこもった。



「佳柄は……『鳳組』って、知ってる?」

「……おおとり、ぐみ?」



聞いたことのない言葉だったから、あたしは素直に聞き返す。

それを聞いたオミくんが、普通知らないよなって、小さく苦笑いした。



「鳳組っていうのは、……ここらを仕切ってる、極道……まあ、わかりやすい言い方すれば、ヤクザってこと」

「やくざ……」

「うん。……それで、俺の名前──フルネームは、鳳 晴臣っていうんだ」

「え、」



なんとなく、ピンときて。思わず、声をもらした。

目の前のオミくんが、なんだか困ったような笑みを浮かべて、小さくうなずく。



「そう。……鳳組は、俺の実家。今の──七代目の組長が、俺の父親で。先代は、じいさんだった」

「……くみ、ちょう……」

「……うちは、代々直系の者が、組長を継ぐようになっていて。じいさんの子どもは母さんひとりしかいなかったから、母さんと結婚した父さんが、婿に入って組を継いだ。……俺は、長男で、ひとりっこだから。だから必然的に、次に組を継ぐのは、俺になる」

「………」



突然の、話に。頭が、ついていかない。

オミくんは1度だけマグカップに口をつけ、コトンとテーブルの上に置いた。

それからひざの上で組んだ自分の両手を見つめながら、また、口を開く。
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