小悪魔恋愛
「逃げろ」
不意に、その言葉を思い出した。
あの人、大丈夫だったのかなあ?
『無事だと、いいな…』
目を瞑ると、今でも蘇る。
耳元で囁かれた、優しい声がー…。
あれは、誰だったんだろう?
知らない人、だよね?
『顔、見とけば良かった…』
どうしてかは分からないけど、気になっている自分が居た。
彼の事を考えると、鼓動が早くなる…。
『心臓、うるさい…』
目を瞑り、耳に手を当てた。
甘く、低い。
そんな優しい声が…聞こえる。
『もう一度、会いたいな…』
こんな感情は、久しぶりに思えた。
あたしはまだ、気付いてなかったんだ。
これが、恋の始まりだという事…。