小悪魔恋愛

「逃げろ」


不意に、その言葉を思い出した。
あの人、大丈夫だったのかなあ?


『無事だと、いいな…』


目を瞑ると、今でも蘇る。
耳元で囁かれた、優しい声がー…。

あれは、誰だったんだろう?
知らない人、だよね?


『顔、見とけば良かった…』


どうしてかは分からないけど、気になっている自分が居た。
彼の事を考えると、鼓動が早くなる…。


『心臓、うるさい…』


目を瞑り、耳に手を当てた。
甘く、低い。
そんな優しい声が…聞こえる。


『もう一度、会いたいな…』


こんな感情は、久しぶりに思えた。

あたしはまだ、気付いてなかったんだ。
これが、恋の始まりだという事…。
< 21 / 33 >

この作品をシェア

pagetop