鬼上司?と嘘恋から始めるスイートラブ
「あ、あの・・・」


「本当に申し訳ない、済まなかったよ。悪かった」



正面玄関よりは人通りの少ない裏口。ただ隣のビルにある工場のパートさんの自転車置き場が向かいに見えるのでチラチラと視線を感じる。

ヒソヒソと聞こえる言葉。何あれ?とか何で謝ってるの?とか本当にやめてほしい。



「あの、気にしてないです。だから頭を上げてください」


「本当?なら・・・」



営業マンが頭を上げてホッとした表情を見せたと同時に私の耳元で聞こえた大きな舌打ち。


「・・・凝りないな、お前。悪いけど佐伯は今日もこれからもお前とは食事に行きません!!」


「なっ、なんだよ、あんた。そこまで口を出すのおかしいだろ」


「学習能力がないな。誰に向かってそんな口を利いているんだ?それに俺には口を出す権利があるんだよ。なんたって佐伯は俺の可愛い部下なんでね、その部下に虫が寄ってきたら払い落とすのは上司の役目だろ?」


「上司だってだけでそこまで口を出す権利ねえだろ!!」


営業マンがヒートアップする。もう恥ずかしくてたまらない。パートさんたちもこっちを見て囃し立ててる。知り合いはいないけれど早く帰りたい。


「じゃ、大事な存在とでも言えばいいか?とにかく、恥を知れ。これ以上まだ佐伯に近づくならお前を会議にかけるぞ」
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