鬼上司？と嘘恋から始めるスイートラブ

その言葉に冷や汗を流し、ピタリと止まった営業マンは俯き加減でトボトボと社内に戻って行った。

チラチラと見ていたパートさんと目が合った瞬間に逸らされた。きっと明日このネタで花が開く。どうか本社の人にはバレませんように。


ふと隣を見るとさっきまで隣にいた課長がいない。キョロキョロと辺りを見渡していると自転車置き場から一台の黒の自転車を出す課長。

「ほらっ、早く乗って。急ぐから」



課長モードから眼鏡を外した課長はシルバーの自転車に跨り、私を手招きで呼ぶ。スーツ姿の大の大人が自転車に跨ってる。

笑ってはいけないけれど笑いそう。口元を手で覆ってニヤケ顔を隠しながら課長に近づいた。


「スカート大丈夫？」


「あっ、はい」


横乗りで自転車の後ろに乗り、課長のスーツを掴む。オフモードの課長は口調が優しい。

ゆっくりとペダルを漕ぐ課長。どこに行くのかわからないけれどまさか課長と二人乗りをするなんて思わなかった。