鬼上司?と嘘恋から始めるスイートラブ
言い終えるとともにドンっと大きな音が響き渡る。課長がサンドバックを叩いた音。そして課長は今日の文句を言いながらサンドバックを叩きまくり始めた。


相手がいるわけでもない。ただ自分のストレスをサンドバックにぶつけているだけ。


でも、汗を流しながら拳を構えてサンドバックを打つ姿は普段の課長でも、ゲームに夢中な悠貴さんでもなくて、また新たな時田悠貴の一面で私は目を奪われた。


「佐伯もやってみる?あっ、でもお前、今日フローラみたいだからダメだな。似合ってるけど」


「フローラ?」


私の視線に気がついた課長は手を止めじーっと私の服装を見ている。フローラ?ゲームのキャラか。「ゲームのキャラですよね」と勝ち誇った顔で言った私に、



「そう。でも、俺があのゲームで一番好きなキャラだけどね」



と自信たっぷりな顔をしてまたサンドバックを打つなんてずるい。「明日からはもっとラフな格好で来いよ、一緒にできるからさ」なんて軽く声を掛けられて、明日もまた連れてきてもらえると思うと嬉しかった。


早速同じブランドのジャージが欲しいと思った私をは、もう完全に恋する乙女になっていた。
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