鬼上司?と嘘恋から始めるスイートラブ
「・・・課長が豊田さんの家に行くようになったのは静佳さんのことがキッカケだからですか?」



駐車場に戻り、塩大福のお金を払ったけれどまた受け取ってもらえなかった。しかもこんなときに限って課長命令。運転も変わるって言ったのに今日はさせないの一点張り。


意外と頑固なんだから。結局課長の運転で豊田さんの家に向かう車内、あたしは思い切って気になることを聞いてみた。



「俺さ、昔からやってたんだ。まあ親父から言われたってのもあるんだけどきっと親父はわかってたんだろうな。自分が長くないって。だからボクシング習わさせられてさ、連れてかれるたんびにお前が母さんを守ってやれ。それからお前が幸せになることが母さんの幸せだって。


プロになりたかったわけじゃないから高校卒業までしか続けなかったけど静佳とのことがあってまた始めたくなったんだ。サンドバックに向かってるときは無心になれるからさ。でもジムは潰れてて俺はおばちゃんに頼んで使わせてもらってる」



「お父さんは課長に全てを託したんですね。そして課長はそれを忠実に守ってる。きっとお父さんも喜んでますよ」



「でも静佳のことで冴子をかなり傷つけたけどな。だから俺は冴子が望むことを叶えてやりたい。冴子は静佳との件を少なからず自分のせいだと思っていた。それが俺には一番嫌なことだったんだ。冴子は俺をちゃんと育ててくれたのにそれを全部くだらない理由で頭から否定された。

その瞬間、たとえ静佳のことが好きでも結婚はできないと思った。冴子を守るのも幸せにするのも俺の役目だと思ってるからさ。冴子は静佳と結婚して婿養子になることもきっと賛成してくれたと思うけど俺はあのとき、キッパリと断ってよかったと思ってる。冴子を一人になんてできなかったからさ」
< 211 / 266 >

この作品をシェア

pagetop